n8nとは?できることと、Zapier・Make・Difyとの違い

公開 書いた人 大林 諒

n8nは、ノードと呼ぶ部品を線でつないで、業務の流れを自動で動かすツールです。この記事では、問い合わせフォームに来た内容をスプレッドシートに残してSlackに知らせる「問い合わせ受付」を例に、n8nで何ができて何ができないかを最初から最後まで見ます。読み終わると、自社がn8nを選ぶべきか、ZapierやMake、Difyのほうが合っているかを判断できます。前提知識は要りません。料金・プラン・AI機能は2026年10月時点の公式情報で書いています。

この記事の内容
  1. n8nは何をする道具か
  2. 始める前に決めること
  3. n8nを形作る部品の一覧
  4. 「問い合わせ受付」で見る、n8nでできること
  5. 向く仕事・向かない仕事
  6. Zapier・Make・Difyとの比較
  7. n8nとDifyの違い
  8. 選び方の結論
  9. 応用:問い合わせ受付を育てる
  10. できないことと、その代わり
  11. よく詰まるところ
  12. 次にやること

n8nは何をする道具か

n8nの読み方は「エヌエイトエヌ」です。公式ドキュメントは自らを「fair-codeライセンスのワークフロー自動化ツールで、AI機能と業務プロセスの自動化を組み合わせたもの」と説明しています。画面の上に「フォームに送信があったら」「スプレッドシートに1行足す」「Slackに投稿する」といったノードを並べ、線でつなぐと、その順に処理が流れます。この一連のつながりをワークフローと呼びます。

fair-codeは、ソースコードが公開されていて誰でも読めて手元で動かせるが、使い方に条件が付いている、という考え方です。n8nのライセンスはSustainable Use Licenseで、許されているのは「自社の内部業務のための利用・改変」と「非商用・個人の利用」です。他者に配ったり提供したりできるのは「非商用で無償の場合だけ」とされています。社員30名の会社が自社の問い合わせ処理をn8nで回すのは、まさに内部業務の利用です。一方で、n8nそのものを顧客に有料で使わせるサービスにする場合は、このライセンスの範囲を外れるので、商用ライセンスの話になります。線引きの細かい話は別の記事に分けています。

使い方は2つあります。n8n社が運営するサーバーで使う「n8n Cloud」と、自社で用意したサーバーやPCに入れて使う「セルフホスト」です。公式の比較表では、Cloudは技術的な知識が「不要」、セルフホストは「インストールと設定に必要」とされています。Cloudは申し込めばすぐ使え、サーバーの面倒はn8n社が見ます。セルフホストは無料のCommunity Editionをそのまま使い続けられますが、サーバーの準備・更新・バックアップは自分の仕事になります。

この種類の道具は、iPaaS(Integration Platform as a Service)と呼ばれます。社内で使っている複数のクラウドサービスを、プログラムを書かずに画面上でつなぐための基盤、という意味です。Zapier・Makeも同じ分類に入ります。n8nがほかと違うのは、セルフホストで自社のサーバーに置けることと、行き詰まったところにJavaScriptやPythonのコードを差し込めることです。

n8nのワークフロー編集画面。Webhook・Google Sheets・Slackの3つのノードが線でつながった全体
n8nのワークフロー編集画面。Webhook・Google Sheets・Slackの3つのノードが線でつながった全体

始める前に決めること

ここを決めずに作り始めると、途中で作り直しになります。どれも1つずつ答えが出せる問いです。

1つ目は、Cloudで使うかセルフホストで使うかです。社内にサーバーの更新やバックアップを引き受けられる人がいなければCloudです。月額1,000〜2,000円台のVPSにDocker Composeで立てる形は費用を抑えられますが、n8nの更新、OSの更新、HTTPSの証明書、止まったときの再起動まで自分で見ることになります。試す段階はCloudの無料トライアルか手元のPCで十分で、本番の置き場所は1本目が動いてから決めても間に合います。

2つ目は、最初に自動化する1本を決めることです。おすすめは、毎日発生して、手作業だと転記漏れが起きていて、止まっても誰かが手で拾える仕事です。問い合わせ受付はこの3つを満たします。逆に、請求や給与のように間違いが許されない処理を1本目にすると、検証に時間がかかって定着しません。

3つ目は、誰が直すかです。n8nは作るより直すほうが大事な道具です。連携先のサービスが仕様を変えた、パスワードを変えたら認証が切れた、といった理由で、ある日ワークフローは止まります。止まったときに画面を開いて原因を探せる人を1人決めておきます。

4つ目は、データをどこに置いてよいかです。n8n Cloudの料金ページには、ホストしているデータはEUのドイツ・フランクフルトのサーバーに保存されると書かれています。顧客情報を国外のサーバーに通してよいか社内規程で確かめ、だめならセルフホストを選びます。

5つ目は、使い道がライセンスの範囲に入っているかです。自社の業務に使うだけなら問題ありません。顧客企業のためにn8nを立てて運用する、n8nを組み込んだ自社サービスを売る、といった場合は、始める前にライセンスを確かめます。

n8nを形作る部品の一覧

n8nの画面で出てくる言葉は、次の表の9つを押さえておけば読めます。

部品何をするものか問い合わせ受付での例
ワークフローノードをつないだ1本の自動化の流れ「問い合わせ受付」
トリガーワークフローを動かし始めるきっかけフォームに送信があった
ノード1つの処理を受け持つ部品スプレッドシートに1行足す
式前のノードの値を差し込む書き方{{ $json.body.company }}
分岐(If・Switch)条件で流れを分ける見積もり依頼だけ営業に知らせる
ループ複数件を1件ずつ処理する前日分の問い合わせをまとめて処理
CodeJavaScriptかPythonで処理を書く電話番号の表記をそろえる
AI AgentLLMに判断させて処理を選ばせる問い合わせの種類を振り分ける
認証情報(Credentials)連携先にログインするための情報Google・Slackのアカウント接続

実行(Execution)という言葉も覚えておきます。公式の用語集では「ワークフローの1回の実行」です。n8n Cloudの料金はこの実行の回数で決まります。

「問い合わせ受付」で見る、n8nでできること

全体の流れ

社員30名ほどの法人向けサービス会社を例にします。Webサイトの問い合わせフォームに送信があると、会社名・担当者名・メールアドレス・問い合わせ内容がn8nに届きます。n8nはその内容をGoogleスプレッドシート「問い合わせ一覧」に1行足し、Slackの #問い合わせ チャンネルに「新しい問い合わせが来ました」と投稿します。ここまでが最初の形で、ノードは3つです。

順番ノード設定の要点
1「Webhook」(外部からのデータ受付)Webサイトのフォームの送信先にこのURLを指定する
2「Google Sheets」(スプレッドシート)操作は「Append Row」(行を追加)
3「Slack」操作はMessageの「Send」(投稿)

Webサイトに問い合わせフォームがまだ無い会社は、1の代わりに「n8n Form Trigger」(n8nのフォームで受け付け)を使えます。n8nがフォームのページそのものを作ってくれ、項目はテキスト・メール・ドロップダウン・日付・ファイルなどから選べます。

Webhookノードの設定画面。Test URLとProduction URLの切り替えが見えるところ
Webhookノードの設定画面。Test URLとProduction URLの切り替えが見えるところ

作って動かすまでの手順

細かい画面操作は入門の記事で1つずつ写真付きで追います。ここでは何をするかの順番だけ押さえます。

  1. n8nの画面で新しいワークフローを作り、名前を「問い合わせ受付」にする
  2. 最初のノードに「Webhook」を置き、HTTPメソッドを「POST」にする
  3. Webhookノードに表示されるTest URLを、Webサイトのフォームの送信先にテスト用として設定する
  4. Webhookノードの「Listen for test event」(またはキャンバス下の「Execute」)を押して、受付待ちの状態にする
  5. Webサイトのフォームからテストの問い合わせを1件送る
  6. Webhookノードの出力に、送った内容が body の下に入っていることを確かめる
  7. 次のノードに「Google Sheets」を足し、Googleアカウントの認証情報を作って接続する
  8. 操作を「Append Row」にし、ファイル「問い合わせ一覧」と、書き込むシートを選ぶ
  9. 列ごとに、式で前のノードの値を割り当てる
  10. 次のノードに「Slack」を足し、Slackの認証情報を作って接続する
  11. 操作をMessageの「Send」にし、投稿先に #問い合わせ を選び、本文を式で組む
  12. もう一度テスト送信し、シートに1行増えてSlackに投稿が出ることを確かめる
  13. キャンバス右上の「Publish」(公開)を押して本番で動く状態にする
  14. フォームの送信先をProduction URLに差し替える

13と14を忘れると、テストでは動いたのに本番では何も起きない、という状態になります。n8nは編集中の内容を自動保存しますが、本番で動くのは「Publish」した版だけです。

Google Sheetsノードの「Append Row」設定。列ごとに式を割り当てたところ
Google Sheetsノードの「Append Row」設定。列ごとに式を割り当てたところ

式で前のノードの値を使う

式は {{ }} で囲んで書きます。中身はJavaScriptで、$json が「直前のノードから来たデータ」を指します。Webhookで受けたフォームの内容は body の下に入るので、Slackの本文は次のように組みます。

新しい問い合わせが来ました
会社名:{{ $('Webhook').item.json.body.company }}
担当者:{{ $('Webhook').item.json.body.name }}
メール:{{ $('Webhook').item.json.body.email }}
内容:{{ $('Webhook').item.json.body.message }}

company や name は、Webサイトのフォーム側で決まっている項目名です。Slackのノードはスプレッドシートのノードの後ろにあるので、ここで $json と書くと、Webhookではなくスプレッドシートのノードの出力を指してしまいます。そのため $('Webhook') のようにノード名を指定して、Webhookの値を取り出しています。Slackの1つ前がWebhookなら {{ $json.body.company }} でも同じ値が取れます。

Slackノードの本文欄で式を書いているところ。右側に結果のプレビューが出ている状態
Slackノードの本文欄で式を書いているところ。右側に結果のプレビューが出ている状態

分岐で流れを分ける

問い合わせの種類によって知らせる先を変えたいときは「If」ノードを使います。条件を満たしたものはtrue側、満たさないものはfalse側に流れます。たとえば「問い合わせ種別が見積もり依頼に等しい」を条件にして、true側だけ営業チャンネルにも投稿します。3つ以上に分けたいときは、公式も案内しているとおり「Switch」ノードに切り替えます。

ループは書かなくてよいことが多い

n8nのノードの間を流れるデータは、itemと呼ぶ単位の並びです。ノードは届いたitemを1件ずつ処理するので、10件の問い合わせが来れば、スプレッドシートには10行足されます。自分でループを組む必要はほとんどありません。公式ドキュメントにも、「Loop Over Items」ノードは多くの場合必要ないと書かれています。使うのは、連携先のAPIに1度に送れる件数の上限があって、小分けにしたいときなどです。

Codeで足りないところを埋める

用意されたノードでは足りないとき、「Code」ノードでJavaScriptかPythonを書けます。電話番号のハイフンをそろえる、全角英数字を半角に直す、といった整形はCodeが早いです。ただしCodeノードの中からはファイルの読み書きもHTTP通信もできません。外部のAPIを呼ぶのは「HTTP Request」ノードの仕事です。また、n8n Cloudでは外部のnpmモジュールを読み込めず、Pythonも外部ライブラリを読み込めません。セルフホストなら外部のnpmモジュールを使えます。

AIは「ノードの1つ」として入る

n8nのAI機能の中心は「AI Agent」ノードです。LLM(大規模言語モデル)に問い合わせ内容を読ませ、「資料請求」「見積もり依頼」「サポート」「営業メール」のどれかを判断させて、その結果で流れを分けられます。AI Agentには、チャットモデルと、少なくとも1つのツールをつなぎます。チャットモデルには「OpenAI Chat Model」「Anthropic Chat Model」「Google Gemini Chat Model」などがあり、各社のAPIキーを認証情報として登録して使います。

AIの位置づけは、あくまで流れの中の1つの部品です。フォームを受けて、シートに書いて、Slackに知らせるという骨格はAI無しで組み、判断が要るところにだけAIを差し込みます。この順で作ると、AIの回答が不安定でも業務が止まりません。

ほかに、やりたいことを文章で頼むとワークフローの組み立てを手伝う「AI Workflow Builder」と、Claude DesktopやClaude CodeのようなAIアプリからn8nのワークフローを作ったり動かしたりできるMCPサーバーの機能があります。AI Workflow Builderは1回の依頼ごとにクレジットを消費し、プランごとの月の上限があります。

AI Agentノードにチャットモデルとツールがつながった状態
AI Agentノードにチャットモデルとツールがつながった状態

向く仕事・向かない仕事

実際に本番で動かしていると、n8nが得意な仕事と、無理に載せると苦労する仕事がはっきり分かれます。

仕事向き不向き理由
フォーム・メールの受付から転記と通知向く典型的な使い方。数ノードで組める
毎朝・毎週の集計と通知向く「Schedule Trigger」で時刻を決めて動かせる
複数のSaaS間のデータ同期(kintone・Salesforceなど)向く連携ノードとHTTP Requestで大半のサービスにつながる
問い合わせの分類・要約・下書き作成向くAI Agentノードを流れに差し込める
数十万件規模の基幹データの一括処理向かない1件ずつのitem処理が前提で、データベースやバッチ処理の専用基盤のほうが速く安全
ミリ秒単位の応答が要る処理向かないノードごとに処理が積み重なり、決済や在庫の即時引当には不向き
会計・給与など1件の誤りも許されない処理の全自動化慎重に止まったときの検知と人の確認を必ず入れる
ITが分かる人が誰もいない会社で、作って完全放置向かない連携先の仕様変更や認証切れで必ず止まる日が来る

最後の行は、ツールの良し悪しではなく体制の話です。Zapierでも同じことは起きます。ただ、セルフホストのn8nはサーバーまで自社の担当になるので、放置したときの影響がいちばん大きくなります。

Zapier・Make・Difyとの比較

よく比べられる3つと並べます。数字は各社の公式ページで確かめた範囲だけ載せています。料金はどれも年払いと月払いで違い、通貨も各社の表示どおりです。

項目n8nZapierMakeDify
主な用途業務の流れを自動化業務の流れを自動化業務の流れを自動化生成AIアプリを作る
課金の単位実行(ワークフロー1回で1)タスク(成功した処理1回で1)クレジット(基本は1オペレーションで1)メッセージクレジット
無料で使える範囲セルフホストのCommunity Editionは無料Freeプランは月100タスクFreeプランは月1,000クレジットSandboxは200メッセージクレジット(月ごとの付与の記載なし)、セルフホストのCommunityは無料
有料の入口Starter 月20ユーロ(年払い)で月2,500実行Professional 月19.99ドル(年払い)で月750タスクCore・Pro・Teams・EnterpriseProfessional 年590ドル(1ワークスペース)
セルフホストできる料金ページに選択肢なし料金ページに選択肢なしできる(Community Edition)
コードJavaScriptとPython。セルフホストなら外部npmも可JavaScriptとPython。有料プランでnpm可JavaScriptとPython(有料プラン、実行1秒で2クレジット)PythonとJavaScript(決まったパッケージのみ)
画面の言語公式の翻訳ファイルは英語のみ公式ヘルプで英語のみと明記—日本語を含む多言語
AI機能AI Agentノード、AI Workflow Builder、MCPサーバーZapier Agents、Copilot、Zapier MCPAIエージェント、AIアシスタントMaia、MCPサーバーRAG、エージェント、プロンプトの比較、ログ分析
向く会社社内に直せる人がいて、件数が多い・データを自社に置きたいITに詳しい人がいなくて、件数が少なく早く始めたい画面で細かく組みたく、件数が中くらい社内向けのAIチャットや文書検索を作りたい

課金の単位の違いは、月の費用に直結します。n8nはワークフロー1回で1実行と数え、途中のノードが何個あっても、扱うデータが何件でも増えません。Zapierはトリガーや「Filter」などの組み込みツールを数えない代わりに、成功したアクション1回ごとに1タスクです。問い合わせ受付のように「シートに書く」「Slackに送る」の2アクションなら、1件の問い合わせで2タスク使います。Makeはモジュールの処理ごとにクレジットを使い、ルーターやエラー処理のモジュールは数えません。

n8nのCloudのFAQには目安も載っています。毎日1回動くワークフローは月30〜31実行、5分おきに動くワークフローは月8,600〜8,900実行ほどです。5分おきのチェックを1本置くだけでStarterの2,500実行を超えるので、定期実行の間隔はプランを選ぶ前に決めます。

なお、n8nのBusinessプランは料金ページ上「セルフホストのみ」で、月667ユーロ(年払い)です。社員20名未満の会社向けに、Businessが半額になるStartup Planもあります。

n8nとDifyの違い

n8nとDifyはどちらもノードを線でつなぐ画面なので、同じ種類の道具に見えます。実際は狙っている仕事が違います。

Difyは、公式に「AIアプリケーションを作るためのオープンソースのプラットフォーム」です。社内文書を取り込んで質問に答えるチャットボット、決まった形式で文章を作るアプリ、エージェントなどを作り、Webアプリとして公開するかAPIで呼び出して使います。文書の取り込みから検索まで(RAG)、プロンプトの比較、ログの分析といった、AIアプリの品質を上げるための機能が厚く作られています。

n8nは、業務の流れをつなぐ道具です。フォームの送信、メールの受信、決まった時刻といったきっかけで動き出し、スプレッドシート・Slack・kintone・Salesforceのような業務のサービスに書き込みます。AIはその流れの途中に置く部品の1つです。

迷ったら、作りたいものの主語で分けます。主語が「AI」で、人がAIに話しかけるもの(社内FAQボット、規程検索)はDifyです。主語が「業務」で、AIは途中で判断を手伝うだけ(問い合わせを分類して担当に回す)ならn8nです。

両方を組み合わせる使い方もあります。社内規程を学習させた回答アプリをDifyで作り、n8nの問い合わせ受付から「HTTP Request」ノードでDifyのAPIを呼んで、回答の下書きをSlackに添えて投稿する、という形です。DifyはAIの答えの質に集中し、n8nは受付から通知までの流れに集中できます。

ライセンスにも違いがあります。DifyはApache License 2.0を改変したライセンスで、Difyの書面による許可なしに、Difyのソースコードでマルチテナントの環境を運営することが禁じられています。また、Difyのフロントエンド(コンソールやアプリの画面)を使う場合は、そこにあるロゴ・著作権表示を消したり変えたりできません。n8nのSustainable Use Licenseとは条件が違うので、どちらも自社の使い方に当てはめて確かめます。

選び方の結論

n8nが合うのは、次のどれかに当てはまる会社です。

  • 社内に、エラーの画面を開いて原因を探せる人が1人いる
  • 問い合わせや受注の件数が多く、タスク課金だと月の費用が読めない
  • 顧客情報を自社の管理するサーバーに置きたい
  • 既製の連携でできないところを、コードやAPIで埋めたい

ZapierかMakeが合うのは、次のような会社です。

  • ITに詳しい人がいなくて、サーバーの面倒を一切見たくない
  • 自動化したい件数が少なく、まず今週中に1本動かしたい
  • 連携したいサービスがすべて既製の連携で足りる

ZapierとMakeの間で迷ったら、画面で分岐や繰り返しを細かく組みたければMake、とにかく少ない手数でつなぎたければZapierです。社内向けのAIチャットや文書検索が目的なら、まずDifyを見ます。

1つ付け加えると、n8nでも最初はCloudから始められます。サーバーの面倒を見られるかどうかは、1本目が業務に定着してから決めても遅くありません。

応用:問い合わせ受付を育てる

最初の3ノードが毎日動くようになったら、同じワークフローを少しずつ育てます。このコラムの記事は、すべてこの「問い合わせ受付」を育てる順に並んでいます。

育て方使うもの効果
問い合わせの種類をAIで振り分けるAI Agentノード、Switchノード見積もり依頼を営業に、不具合をサポートに直接回せる
毎朝9時に未対応の件数を知らせる「Schedule Trigger」、Google Sheetsの「Get Row(s)」対応漏れが朝のうちに見える
止まったら気づく「Error Trigger」とエラー用ワークフロー認証切れなどで止まったら、その場でSlackに通知が来る
顧客管理に登録するSalesforceノード。kintoneは専用ノードが無いのでHTTP Request問い合わせが来た時点で見込み客の記録ができる
自動返信を送るGmailノード受付の確認メールを数秒で返せる

止まったら気づく仕組みは、1本目を作った直後に入れておきます。エラー用のワークフローの先頭に「Error Trigger」を置き、監視したいワークフローの名前の横にある「…」メニューから「Settings」を開き、「Error Workflow (to notify when this one errors)」の欄にそれを指定するだけです。運用しているn8nで、Googleの認証が切れて3日間シートに何も書かれていなかった、という事故はこれで防げます。

ワークフローのSettings。「Error Workflow (to notify when this one errors)」の欄が見えるところ
ワークフローのSettings。「Error Workflow (to notify when this one errors)」の欄が見えるところ

できないことと、その代わり

できないこと代わりの手
Cloudで外部のnpmモジュールやPythonライブラリを読み込むセルフホストに移るか、処理を外部のAPIに切り出してHTTP Requestで呼ぶ
Cloudで未検証のコミュニティノードを入れるセルフホストにする。または公式ノードとHTTP Requestで組む
Codeノードの中からHTTP通信やファイル操作をする「HTTP Request」ノードやファイルの読み書きノードに分ける
日本語の管理画面で使うノード名と画面は英語のまま覚える。このコラムは英語表示をそのまま書いている
無料のCommunity Editionで、複数人でワークフローや認証情報を共有するCloudの有料プランか、セルフホストのBusiness以上
Community EditionでGitによるバージョン管理や本番・開発の環境分けBusiness以上。小さな会社はワークフローのJSONを書き出して保管する
1件ごとにミリ秒単位で即答する即答が要る部分はアプリ側で作り、n8nは後ろの通知や記録を受け持つ
複数人が同じワークフローを同時に編集する編集できるのは1人ずつ。担当を決めて交代で触る

無料のCommunity Editionに入っていない機能は、公式に一覧があります。プロジェクト、ワークフローと認証情報の共有、Gitでのバージョン管理、環境の分離、SSO、ログのストリーミングなどです。無料で登録すると、フォルダ、エディタ上でのデバッグ、実行データへの独自項目の追加が使えるようになります。

セルフホストのn8nで、Community Editionの登録画面
セルフホストのn8nで、Community Editionの登録画面

よく詰まるところ

始める前の誤解と、使い始めてすぐ当たる壁をまとめます。

症状・思い込み実際どうするか
「n8nは無料で何でもできる」無料なのはセルフホストのCommunity Editionで、サーバー代と自分の作業時間がかかる。共有やGit連携も入っていないサーバー代と保守の時間を費用として見積もってからCloudと比べる
「Cloudとセルフホストは同じ機能」Cloudは外部npmや未検証のコミュニティノードが使えない。セルフホストはBusiness以上でないと使えない機能がある使いたい機能が両方で使えるかを先に確かめる
「日本語で使える」公式の画面の翻訳は英語のみ英語のノード名で覚える。式のエラーも英語で出る
テストでは動くのに本番で動かない「Publish」していない、またはフォームの送信先がTest URLのままPublishして、送信先をProduction URLに差し替える
本番の実行結果が編集画面に出てこない本番の実行は編集画面に表示されない仕様ワークフローの「Executions」タブで見る
毎朝9時のはずが夜に動くセルフホストのタイムゾーンの初期値は America/New_York.env で GENERIC_TIMEZONE=Asia/Tokyo を設定する。ワークフロー個別の設定でも直せる
Cloudの実行回数がすぐ上限に近づく5分おきのSchedule Triggerだけで月8,600回以上になる定期実行の間隔を延ばすか、Webhookでイベントが起きたときだけ動かす
1件の問い合わせで同じ投稿が何回もSlackに出る前のノードが複数のitemを出していて、その件数分だけ処理された前のノードの出力件数を確かめ、必要なら「Limit」や条件で1件に絞る
式が undefined になる$json が指すのは直前のノードで、取りたい値は別のノードにある$('Webhook').item.json.body.company のようにノード名で指定する
Codeノードで外部APIを呼べないCodeノードの中ではHTTP通信ができない「HTTP Request」ノードを前後に置く
ある日からシートに何も書かれなくなった連携先のパスワード変更や権限の見直しで、認証情報が切れている認証情報を接続し直す。再発に備えてError Triggerで止まったら通知が来るようにする
Zapierから乗り換えたら、Zapの数だけワークフローができた1つのZapを1本のワークフローに写している同じきっかけで動くものは、Ifで分岐させた1本にまとめる

乗り換えのときの組み直しは、流れを整理し直す良い機会になります。Zapierで5つのZapに分かれていたものが、n8nではIfで分岐させた1本にまとまることもよくあります。

次にやること

n8nが自社に合いそうなら、次は費用の見積もりと、最初の1本を動かすところに進みます。

料金の記事でプランと費用の目安を決め、入門の記事で問い合わせ受付の3ノードを実際に動かします。本番でセルフホストにするなら、そのあとでセルフホストの記事に進みます。

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