広告代理店の選び方|運用代行に任せる前に確認することとインハウス化の判断
広告代理店(運用代行)を選ぶときに、契約前に必ず確認したいのは、広告アカウントの所有権、レポートの中身、担当者の体制、手数料の体系、最低契約期間の5つです。料金の安さや実績の数より、この5つが明確な会社のほうが、あとで困ることが少なくなります。自社で運用するインハウス化が向くかどうかも、同じ観点で判断できます。
この記事では、代理店のタイプ、契約前の確認項目と聞き方、手数料の考え方、インハウス化の判断基準と、両方を組み合わせるやり方までをまとめます。Nexlyも広告運用を請け負う立場ですが、ここでは依頼する側が自社を守るために確認してほしいことを、立場を問わずに書きます。
この記事でわかること
- 代理店のタイプ別の向き・不向きと、自社に合う選び方
- 契約前に確認する項目と、面談での具体的な質問
- 手数料の体系の違いと、費用を比べるときの計算の仕方
- インハウス化の判断基準と、一部だけ外部に任せるハイブリッド型
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広告代理店のタイプ|自社の課題に合う相手を見分ける
広告の運用を頼める相手は、ひとくくりに代理店と呼ばれても、得意なことが大きく異なります。まず、どのタイプに何を頼めるのかを整理します。
| タイプ | 主に頼めること | 向く会社 | 注意したい点 |
|---|---|---|---|
| 総合広告代理店 | マス広告を含む幅広い媒体の企画・出稿 | 複数の媒体を横断して計画したい会社 | 運用の担当が別の部署や外部に分かれる場合があり、現場の担当者の経験を確かめたい |
| 運用型広告に特化した会社 | 検索広告、SNS広告などの運用・改善 | 広告の運用に専念してもらいたい会社 | 商談や受注のデータまで見るかは会社による |
| 制作・LP改善を含む会社 | LPや広告クリエイティブの制作と運用 | LPや素材の改善から手を入れたい会社 | 運用と制作で担当が分かれる場合の連携 |
| 戦略・計測まで見る会社 | 設計、計測、CRMとの連携を含めた支援 | 広告の先(商談・受注)まで見たい会社 | 範囲が広いぶん、何をどこまで任せるかの線引きが必要 |
| フリーランス・個人 | 特定の媒体の運用 | 小さな予算で、特定の媒体を任せたい会社 | 不在時の代替、引き継ぎの体制 |
どれが優れているという話ではなく、自社の課題がどこにあるかで選びます。問い合わせは来るのに受注につながらないなら、運用の腕より、広告の先まで見られる相手が合います。逆に、設計はできていて、運用の工数だけが足りないなら、運用特化のほうが費用が抑えやすくなります。
課題が「何をやればいいか分からない」段階にあるなら、代理店を探す前に、成果の定義や許容CPAといった前提を整える作業が先に来ます。これはマーケティングの上流設計とはで書いた内容です。前提が決まっていないまま依頼すると、代理店の提案の良し悪しも判断できません。

候補を絞って比べる進め方
候補は、最初から多く並べず、3社前後に絞ると比較しやすくなります。進め方の例を挙げます。
- 自社の課題と、頼みたい範囲を1枚にまとめる(広告費の見込み、目標の件数、使いたい媒体、データの共有範囲)
- 同じ資料を、各社に同じ形で渡し、提案と見積もりを同じ条件でもらう
- 前の章の5つの軸と、契約書の箇所を、同じ表で採点する
- 担当者になる人と、必ず面談する(営業担当だけで判断しない)
- 小さく始められるなら、短い期間の試行から入る
手順2の「同じ資料を同じ形で渡す」ことで、提案の差が、会社の力の差として見えます。渡す情報が会社ごとに違うと、提案の違いが、情報の違いなのか、力の違いなのかが分からなくなります。4で担当者と会うのは、営業担当と運用担当が別の人であることが多いからです。実際に毎日数字を見る人と、考え方が合うかどうかを確かめてください。
契約前に確認する項目|5つの軸と、聞き方
代理店を比べるときに、料金表と実績ページだけで決めると、あとから食い違いが出ます。次の5つの軸で、契約書や見積書、面談での回答を確認してください。
| 確認する軸 | 聞くこと | 確認したい状態 |
|---|---|---|
| アカウントの所有権 | 広告アカウントは誰の名義で作るか。契約を終えたとき、アカウントとデータはどうなるか | 自社が管理者として入れる。終了後も引き継げる |
| レポート | 何を、いつ、どの形式で出すか。商談や受注まで見るか | 見る指標と頻度が事前に決まっている |
| 担当者の体制 | 誰が実際に運用するか。経験は。不在時の代替は | 担当者が特定でき、窓口が一本化されている |
| 手数料の体系 | 何に対して、いくらかかるか。広告費は別か含むか | 見積もりの内訳が明確で、追加費用の条件が書かれている |
| 契約期間と解約 | 最低契約期間はあるか。解約の手続きと、通知の期限は | 解約の条件が契約書に明記されている |
この5つのなかで、あとから取り戻しにくいのは1つめの所有権です。次の章で詳しく扱います。
契約書・提案書で見ておく箇所
面談で聞いた内容は、口頭のままにせず、契約書や提案書に書かれているかを確認します。とくに次の箇所は、あとで認識が食い違いやすい部分です。
| 箇所 | 確認すること |
|---|---|
| 業務の範囲 | 運用に含まれる作業(設定、入札調整、広告文の作成、レポート)と、含まれない作業(LP制作、動画制作など) |
| 成果の定義 | 報告するコンバージョンは何か。自社の定義(問い合わせ、資料請求など)と一致しているか |
| 目標と見直し | 目標CPAや件数を、いつ、誰が見直すか |
| データの扱い | 配信データ、アカウントの設定、計測のデータが誰のものか。契約終了後の扱い |
| 守秘義務 | 顧客リストなど、渡した情報の扱い |
| 再委託 | 運用の一部を、ほかの会社や個人に任せることがあるか。あるなら事前の連絡は |
提案書では、「何をやるか」の一覧より、「なぜそれをやるのか」の説明が書かれているかを見ます。自社の課題に触れず、他社にも使い回せるような内容なら、自社の状況を理解したうえでの提案とは言いにくいです。提案の段階で、自社の数字(過去の問い合わせや受注)を見せてほしいと依頼されるかも、判断の材料になります。
アカウントの所有権|自社が管理者でいられるかを必ず確認する
広告アカウントの所有権は、契約前に確認する項目のなかで最も優先度が高いものです。代理店の名義でアカウントを作ると、契約を終えるときに、過去の配信データや設定、学習の蓄積を持ち出せない場合があります。
Google広告のヘルプでは、複数の広告アカウントをまとめて管理するための仕組みとして、マネージャーアカウント(MCC)が説明されています。MCCは、リンクされたクライアントのアカウントに対して、ユーザーのアクセス権の管理を含む権限を持ちます。一方、クライアント側のアカウントの管理者権限を持つユーザーは、いつでもリンクを解除できるとも書かれています。つまり、自社の広告アカウントを自社名義で持ち、代理店のMCCからリンクしてもらう形にしておけば、契約を終えるときに自社の意思で解除できる、ということです。
アクセス権の種類も確認しておきます。Google広告のヘルプによると、アクセスレベルは次の5つに分かれています。
| アクセスレベル | できること(ヘルプの記載の要約) |
|---|---|
| メール専用 | 通知メールやレポートを受け取る |
| お支払いとご請求 | 支払い情報や請求に関する操作。キャンペーンは操作できない |
| 読み取り専用 | キャンペーンやレポートの閲覧。編集はできない |
| 標準 | キャンペーンの編集やコンバージョンの作成。アクセス権の管理はできない |
| 管理者 | すべての機能。他のユーザーのアクセス権の付与・変更、MCCのリンク申請の承認・解除もできる |
自社には、最低でも「管理者」を1つ持っておくことをおすすめします。ヘルプでも、管理者が1人しかいないと、その人が対応できなくなったときに困る可能性があるため、管理者を追加しておくことが推奨されています。代理店には、運用に必要な範囲として「標準」を付与し、請求や支払いの設定は自社で持つ、といった分け方が考えられます。
Metaにも、ビジネスポートフォリオ(Metaの広告やページをまとめて管理する単位)で広告アカウントを持ち、パートナーとして代理店に必要な範囲のアクセスを付与する仕組みがあります。権限の名称や選べる範囲は変更されることがあるため、設定するときはMetaのビジネスヘルプで現行の内容を確認してください。自社のビジネスポートフォリオで広告アカウントを持ち、代理店には必要な範囲のアクセスだけを共有する形にしておくと、Googleと同じ考え方で自社が主導権を持てます。
すでに代理店のアカウントで運用している場合でも、確認は可能です。管理画面の「アクセスとセキュリティ」などで、誰が管理者になっているかを見てください。自社の担当者が管理者として入れない場合は、契約の見直しの際に、アクセス権の付与を相談します。

手数料の体系|見積もりを同じ条件にそろえて比べる
手数料の体系は、会社によって名前も中身も違います。比較するときは、名前でなく、何に対していくらかかるのかを同じ形に直します。
| 体系 | 仕組み | 向く場面 | 注意したい点 |
|---|---|---|---|
| 広告費に対する割合 | 広告費の一定の割合を手数料とする | 広告費が大きく、運用の工数も比例する場合 | 広告費が増えるほど手数料も増える。改善しても手数料が下がりにくい |
| 固定の月額 | 広告費に関係なく、決まった金額 | 広告費が小さい、または変動が大きい場合 | 対応範囲が、どこまで含まれるかを確認する |
| 成果報酬 | 獲得した件数に応じた報酬 | 成果の定義が明確な場合 | 成果の定義、無効の扱い、計測の基準を契約で確認する |
| 組み合わせ | 固定費と、割合または成果報酬を併用 | 初期の設計費と運用費を分けたい場合 | どの部分が、どの条件で発生するかの整理 |
手数料率の水準は会社ごとに違い、出典のある相場として示せる数字はありません。ですから、相場に当てはめるのではなく、自社の条件で、手数料込みの実質のCPAがいくらになるかを計算して比べます。次は、数字を置いた計算例です。仮の数字で、実際の料金ではありません。
| 項目 | 仮の数字 | 計算 |
|---|---|---|
| 月の広告費 | 50万円 | |
| 手数料(広告費の20%と仮定) | 10万円 | 50万円 × 20% |
| 月の獲得件数 | 25件 | |
| 広告費だけで見たCPA | 2万円 | 50万円 ÷ 25件 |
| 手数料込みの実質CPA | 2.4万円 | 60万円 ÷ 25件 |
この例では、広告の管理画面で見えるCPAは2万円ですが、手数料を含めた実質のCPAは2.4万円です。目標のCPAは、手数料も含めた数字で決めておく必要があります。代理店が報告するCPAが、手数料を含んでいるのかどうかも、確認しておきたい点です。目標CPAの決め方はCPAとは|計算方法・目安と、目標CPAの決め方に書いています。
見積もりを比べるときは、次のことを同じ条件にそろえます。広告費が含まれるのか別か、初期費用(アカウント設定、計測設定)はあるか、LPや広告素材の制作は含まれるか、レポートの作成や定例の打ち合わせの頻度、追加で費用が発生する条件。この5つをそろえると、見かけの金額が低い会社が、実は範囲が狭いだけだった、という比較ミスを避けられます。広告費の考え方全般はリスティング広告の費用|予算の決め方と、少額で始めるときの考え方も参考になります。
成果報酬型は、自社の持ち出しが少なく見えるため魅力的ですが、成果の数え方で注意が必要です。報酬の対象になる「成果」が、問い合わせフォームの送信なのか、営業が確認した有効な問い合わせなのかで、支払う金額も、代理店が優先する運用の方向も変わります。送信件数だけを基準にすると、質の低い問い合わせが増えても報酬が発生してしまうため、有効と判断する基準と、無効だった場合の扱いを、契約の段階で決めておいてください。
最低契約期間についても、一言添えます。広告の運用は、設定をして数字が安定するまでに一定の期間が必要なため、数か月単位の最低期間を設ける会社は少なくありません。期間そのものが悪いわけではなく、その期間に何を行い、何を持って成果を評価するのか、途中で解約するときの条件は何か、を契約前に確認しておくと安心です。評価の基準が曖昧なまま、期間だけが長いと、成果が出なくても動けなくなります。

レポートと打ち合わせ|数字が「意思決定に使える形」で出るか
レポートで確認したいのは、きれいかどうかより、次に何を決めるのに使えるかです。表示回数やクリック数だけが並んでいて、その数字が売上にどうつながったかが書かれていないレポートは、意思決定の材料になりません。
確認したいレポートの中身は、次のとおりです。
- 目標に対する実績(件数、CPAなど)と、差の理由
- 前月や前週との変化と、その背景にある設定変更や外的要因
- 媒体・キャンペーン別の成果と、予算配分の提案
- 問い合わせの先(商談化、受注)の状況。見られない場合は、見るための方法の提案
- 次の期間に試すことと、その理由
とくに4つめは、代理店が広告の管理画面しか見られない場合、自社側のデータを共有する必要があります。CRMや管理表から、媒体別の商談化や受注を渡せる状態にしておくと、広告の判断が問い合わせ件数だけで止まらなくなります。広告の成果をCRMに返して、計測の精度を上げる方法は広告の計測精度を上げる方法で扱っています。
打ち合わせは、報告の場ではなく、決める場にします。毎回、「前回決めたことの結果」「今回の判断」「次回までにやること」の3点で終わる形にすると、報告だけの会議になりにくくなります。成果が急に動いたときにすぐ原因を探る体制があるかも確認しておきたい点で、切り分けの考え方は広告のCPAが急に悪化したときの原因の切り分け方が参考になります。
支援の現場から(オンライン英会話スクール)
オンライン英会話スクールで、Googleの担当者から、目標CPAを3.5万円で入れる提案を受けたことがあります。こちらは最初、実績の約3.9万円より低いと考えかけましたが、その3.9万円は配信を始めた直後の申込0件の数日を含んだ全期間の値でした。直近7日だけなら197,699円で申込6件、約3.3万円です。
提案の3.5万円は直近の実績より上なので、配信が絞られる心配は小さいと分かり、そのまま受けました。代理店や媒体の担当者の数字は、どの期間で計算したかを確かめてから判断します。
面談で聞く質問と、注意したい答え方
面談では、実績の話より、仕組みと責任の話を聞きます。次の質問は、どの代理店にも共通して使えます。
- 広告アカウントは、誰の名義で作りますか。契約を終えたとき、どうなりますか
- 実際に運用する担当者は誰ですか。経験と、担当件数は
- レポートでは、何の数字を、どの頻度で見せてもらえますか
- 商談や受注の数字は、どうやって広告の判断に使いますか
- 手数料は、何に対していくらですか。追加で費用がかかるのはどんな場合ですか
- 最低契約期間と、解約の手続きを教えてください
- 成果が出なかったときは、どんな対応をしますか
- 計測の設定(タグ、コンバージョン)は、誰が、どこまで行いますか
聞いたあとの答えの見方も、先に決めておきます。
| 答え方 | 見方 |
|---|---|
| 具体的な手順と、できない範囲も話す | 仕組みが整っていて、誠実に説明している可能性が高い |
| 「お任せください」「大丈夫です」だけで、中身が出てこない | 具体的に聞き返し、契約書に落とせるかを確認する |
| アカウントの名義や権限の質問をはぐらかす | 所有権が代理店側にある可能性があり、慎重に確認する |
| 成果を断定的に約束する | 広告の成果は条件で変わる。根拠と、外れたときの対応を聞く |
成果を「必ず」「確実に」と約束する提案は、とくに注意が必要です。広告の成果は、商品、価格、競合、時期など、代理店の運用以外の要因でも動くからです。約束の強さより、見込みの前提と、外れたときの対応が語られているかを見てください。
インハウス化の判断|自社で運用するのが向く条件
インハウス化とは、広告の運用を社内の担当者が行うことです。代理店に払っていた手数料がなくなる一方で、運用の工数と、知識を身につける時間が必要になります。判断するときは、費用だけでなく、次の観点を見ます。
| 観点 | インハウスが向きやすい状態 | 外部が向きやすい状態 |
|---|---|---|
| 広告費の規模 | 運用の工数に見合う広告費がある | 広告費が小さく、専任を置く効果が薄い |
| 運用の難易度 | 媒体が少なく、構成が単純 | 複数の媒体や、複雑な計測が必要 |
| 社内の工数 | 週に一定の時間を、継続して確保できる | 担当者が他の業務と兼務で、時間が取れない |
| 知識と経験 | 学ぶ意欲のある担当者がいる | 担当者がいない、または頻繁に交代する |
| 商談・受注との連携 | 営業と広告の担当が近く、情報が共有できる | 部署が離れ、データがつながらない |
工数の見積もりは、広告運用の作業を分解すると見えます。日々の数字の確認、検索語句やキーワードの見直し、広告文やクリエイティブの更新、レポートの作成、計測の点検、媒体の仕様変更への対応などです。たとえば、1つの媒体の運用で、週に数時間を継続して確保できるのか、できないなら誰が代わりに行うのか、を事前に書き出してください。
工数のイメージを、仮の数字で置いてみます。1つの媒体を、1人で運用するときの週の作業を書き出したものです。実際の時間は、アカウントの規模や構成によって大きく変わるため、あくまで見積もりの型として使ってください。
| 作業 | 頻度 | 1回の時間(仮) | 月の合計(仮) |
|---|---|---|---|
| 数字の確認、異常の点検 | 週3回 | 20分 | 約4時間 |
| 検索語句・除外設定の見直し | 週1回 | 40分 | 約3時間 |
| 広告文・素材の更新 | 月2回 | 90分 | 3時間 |
| レポート作成・振り返り | 月1回 | 2時間 | 2時間 |
| 計測の点検、仕様変更の確認 | 月1回 | 1時間 | 1時間 |
| 合計 | 約13時間 |
この仮の例では、月に約13時間、週にならすと3時間ほどです。この時間を、本業の合間に、継続して確保できるかが判断の分かれ目になります。見積もりに、学習の時間や、数字が崩れたときの調査の時間は含まれていません。余裕を見て、1.5倍ほどを確保できるかを確かめてください。確保できない場合は、先に挙げたハイブリッド型や、部分的な委託を検討します。
切り替えるときは、いきなり全部を移すのではなく、段階的に進めるほうが安全です。次のような順番が考えられます。
- アカウントの管理者権限を、自社が持っていることを確認する
- 代理店に、運用の考え方や設定の理由を、資料で残してもらう
- 一部のキャンペーンから、自社の担当者が運用を始める(代理店は伴走)
- 数か月、成果を比べ、問題がなければ範囲を広げる
- 計測と定例の仕組みを、自社で回せる状態にする

ハイブリッド型|戦略と点検は外部、日々の運用は社内
代理店か、インハウスかの二択ではなく、役割を分ける方法もあります。日々の運用は社内で行い、戦略の見直し、計測の点検、アカウントの定期的なレビューを外部に頼む形です。小さな会社で、専任の担当者を置けない場合に、現実的な選択になります。
| 役割 | 社内で持つ | 外部に任せる |
|---|---|---|
| 日々の数字の確認、軽微な調整 | ◎ | |
| 広告文・LP・素材の改善 | 〇 | 〇(得意なほう) |
| 戦略の見直し、目標CPAの設計 | 〇(最終決定) | ◎(壁打ち) |
| 計測・タグ・コンバージョンの設計 | ◎(初期設計と定期点検) | |
| アカウント構成のレビュー | ◎(月に1回など) |
この形のよい点は、自社に運用の知識が貯まることと、外部の視点が定期的に入ることです。役割分担を決めるときは、誰が最終決定をするのか、トラブルが出たときの連絡先、レビューの頻度と成果物(レポートや改善案)の形式を、契約書やメモに残しておきます。
費用の面では、ハイブリッド型は、月額の固定費を小さくできる反面、社内の工数が増えます。先ほどの計算の型で、社内の工数を時間単価に直して、手数料との合計で比べると、どちらが合理的かが見えてきます。工数の見積もりを入れずに「外部に払う費用が減るから得」と判断すると、本業の時間を圧迫して、運用が止まる原因になります。
また、外部のレビューを使う場合は、指摘を受けたあとに実際に直す担当者と期限を決めておくことが肝心です。指摘だけが蓄積して、直されないまま次のレビューを迎える、というのは、この形でよくある失敗です。レビューの終わりに、直すことを3つまでに絞って、次回までの担当を決める形にすると、実行されやすくなります。
代理店を変えるとき、契約を終えるときのチェック
乗り換えや、インハウス化で契約を終えるときは、次の点を事前に確認します。契約書に書かれているか、書かれていなければ、終了の前に確認をとります。
| 確認すること | 具体的に |
|---|---|
| アカウントの管理者権限 | 自社が管理者として入れているか。代理店とのリンクを、自社の意思で解除できるか |
| 計測の設定 | タグ、コンバージョンの設定、タグ管理ツールの権限が自社にあるか |
| 配信データ・レポート | 過去の実績データを、どの形式で受け取れるか |
| 設定の記録 | キャンペーン構成、除外設定、入札の考え方などが文書で残っているか |
| 支払い関係 | 請求の名義、支払い方法、最終請求の時期 |
| 解約の手続き | 通知の期限、書式、最終の稼働日 |
引き継ぎは、広告の運用を止めない範囲で進めます。切り替えの直後は、一時的に成果が不安定になることがあるため、前後の数字を並べて比較できるよう、切り替えの日付を記録しておきます。
よくある質問
Q. 代理店を選ぶとき、実績の数は見るべきですか?
実績の数だけでなく、自社と似た課題に対応した経験があるかを見てください。ただし、実績として出せる数字は会社ごとに基準が違うため、数字そのものを比べるより、どんな課題に、どう対応したかの説明が具体的かを重視します。
Q. 小さな予算でも、代理店に頼めますか?
頼めますが、広告費が小さいと、手数料の割合や固定費が、広告費に対して重くなりやすいです。依頼する前に、手数料込みの実質のCPAを計算して、目標に収まるかを確かめてください。予算が小さい場合は、部分的な支援(初期設計と月次のレビューだけ)を相談する方法もあります。
Q. 複数の代理店に、同時に依頼してもよいですか?
媒体や目的を分ければ可能です。ただし、同じ媒体の同じ商品で複数の会社が運用すると、入札や配信が競合して、成果の比較も難しくなります。分ける場合は、媒体ごと、または商品ごとに、担当を明確にしてください。
Q. 成果が出ないとき、どのタイミングで代理店を変えるべきですか?
変える前に、成果が出ない理由が運用にあるのか、商品や価格、LP、計測にあるのかを切り分けます。判断に必要な件数が集まっていない段階での乗り換えは、やり直しになりがちです。原因の切り分けを、第三者のレビューで確かめるのも方法です。
Q. インハウス化のために、最初に学ぶべきことは何ですか?
成果の定義(何をコンバージョンとするか)と、計測の仕組みです。運用の細かい操作は、あとから習得できますが、計測が不正確だと、判断そのものが間違ってしまいます。
まとめ:代理店選びは「所有権・数字・体制」の確認で決まる
広告代理店を選ぶときは、料金や実績の見た目より、広告アカウントの所有権、レポートの中身、担当者の体制、手数料の体系、契約期間を確かめることが先です。自社で運用するか、外部に任せるか、両方を組み合わせるかは、広告費の規模、工数、知識、営業との連携から判断します。
- 広告アカウントは自社の名義で持ち、自社が管理者でいられる形にする
- 手数料は、手数料込みの実質のCPAで比べる
- レポートは、商談や受注まで見て、次の判断に使える形にする
- 面談では、実績より、仕組みと責任の範囲を聞く
- インハウス化は、広告費・工数・知識・連携の4点で判断し、段階的に進める
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この記事を書いた人
株式会社Nexly 代表 大林 諒。広告運用、kintone・SalesforceなどのCRM構築、業務の自動化とAI活用を中心に、マーケティングの設計から実行まで中小企業の支援をしています。自社でも転職エージェント「Re:WORK」を運営し、広告・SEO・CRMを日々回しています。