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中小企業のDXの進め方|失敗しにくい5つのステップと最初の一歩

中小企業のDXの進め方|失敗しにくい5つのステップと最初の一歩

中小企業のDXは、「目的を一文で決める」「1つの業務で小さく試す」「前後の数字を比べて広げる」の順で進めると、失敗しにくくなります。いきなり全社のシステムを入れ替えたり、流行のツールから選んだりすると、現場が使わないまま終わりやすいためです。

この記事では、経済産業省が示すDXの定義と進め方を土台に、中小企業が最初にやること、5つのステップ、体制の組み方、予算の考え方を順に説明します。5つのステップは、経産省の公表資料をもとにNexlyが中小企業向けに並べ直したものです。公式の手順そのものではないので、その点は途中でも断っています。

この記事でわかること

  • 経産省が示すDXの意味と、「ツールを入れること」との違い
  • IPAの調査から見た、中小企業のDXの現状
  • 最初の1か月でやること(目的の一文化、困りごとの選定、棚卸し)
  • 失敗しにくい5つのステップと、経産省の4段階との対応
  • 社内の担当と外部の使い分け、予算の考え方(計算例つき)

DXの意味:経産省の定義は「ツールの導入」ではなく「変革」

DXは、デジタルトランスフォーメーションの略です。経済産業省の「デジタルガバナンス・コード3.0」(2024年9月改訂。2026年10月時点で確認できた正式版)は、DXを次のように定義しています。企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること、です。

同じ省の「中堅・中小企業等向けDX推進の手引き2025」は、これをもう少し短く言い直しています。顧客視点で新たな価値を創出していくために、ビジネスモデルや企業文化の変革に取り組むことであり、単にデジタル技術やツールを導入すること自体ではなく、企業経営の変革そのもの、という説明です。

つまり、ツールを入れたことはDXの出発点であって、到達点ではありません。実務では、DXを3つの段階に分けて考えると整理しやすくなります。IPA(情報処理推進機構)の「DX動向2025」も、取組の段階を3つに分類しています。

段階内容(IPAの分類)身近な例
デジタイゼーションアナログ・物理データのデジタル化紙の台帳や手書きの伝票を、表計算やシステムに入れる
デジタライゼーション業務の効率化による生産性の向上、既存の製品・サービスの高付加価値化入力や集計を自動化する。顧客への連絡をシステムで一元管理する
デジタルトランスフォーメーション新規製品・サービスの創出、組織横断の業務プロセスのデジタル化、顧客起点のビジネスモデルの変革、企業文化の変革蓄積したデータから新しいサービスを作る。部門をまたいで業務の流れを組み直す
DXの3段階を示した図。デジタイゼーション(デジタル化)、デジタライゼーション(業務の効率化)、デジタルトランスフォーメーション(変革)の順に、取組の範囲が広がる
DXの3段階(IPA「DX動向2025」の分類をもとに作成)

中小企業が最初に取り組むのは、多くの場合、1段目と2段目です。それで構いません。手引きも、まずは身近なところ、取りかかりやすいところから、たとえば個別業務のデジタル化や既存データの活用から着手し、ノウハウを蓄積しながら徐々に取組を拡大していく企業が多い、と述べています。ただし、最終的に目指すのは3段目で、1段目と2段目だけで止まらないよう、目的を先に決めておく必要があります。

中小企業のDXの現状:100人以下の取組は半数を割り、成果の把握も遅れている

IPAが2025年2月から3月にかけて実施した調査をまとめた「DX動向2025」には、日本の中小企業の状況が数字で出ています。主なものを抜き出します。

項目結果(日本)
何らかの形でDXに取り組んでいる企業全体で77.8%。従業員100人以下の企業は46.8%
DXに取り組まない理由(100人以下で最多の回答)「自社がDXに取り組むメリットがわからない」。次いで「知識や情報が不足している」
DXの予算の確保状況(100人以下)予算が「確保されていない」企業が4分の1程度
「成果が出ている」と答えた企業(100人以下)58.1%
専門部署またはプロジェクトチームがある企業(100人以下)20.7%
DXの成果指標を設定している企業27.4%(米国は89.8%、ドイツは82.7%)

この表から読み取れることは3つあります。取り組んでいない中小企業の多くは、「やる意味がわからない」「何から手をつけるか知らない」で止まっていること。取り組んでいても、予算や担当者が確保されていないことが多いこと。そして、成果を測る指標を決めていない企業が多く、成果が出ているのかどうかも追えていないことです。この記事の5つのステップは、この3点を順に埋める形になっています。

IPAは、日本のDXが社内の業務効率化を目指す内向きの性質を強く持ち、個別の業務プロセスの改善にとどまる傾向がある、とも分析しています。中小企業が個別の業務から始めること自体は自然ですが、そこで終わらず、次の段階を意識しておくと、取組が行き止まりになりません。

最初にやること:目的を一文にして、困りごとを1つ選ぶ

最初の1か月でやることは、ツールの比較ではありません。次の3つです。

1. 目的を一文で書く

手引きは、目的が曖昧なまま「AIを使って何か新しいことができないか」と考えたり、デジタル技術導入のためのデジタル技術導入になったりすることを、避けるべき例として挙げています。そこで、「何を、どれくらい、いつまでに良くしたいか」を一文にします。

数字は仮でも構いません。目的に数字が入っていれば、あとで効果を測れます。

2. 困りごとを3つ書き出して、1つに絞る

現場の担当者に聞いて、時間がかかっていること、ミスが出ること、特定の人にしかできないことを3つ挙げてもらいます。その中から、効果が見えやすく、ルールが書き出しやすい1つを選びます。選び方は業務の棚卸しのやり方の優先度の表で詳しく説明しています。

3. 経営者が「やる」と決めて、社内に伝える

手引きは、中堅・中小企業のDXでは、経営者がリーダーシップを取ることが成功のポイントの1つ目に挙がっている、と整理しています。経営者が自分で全部やる必要はありませんが、「これをやる」と決め、現場に理由を伝える役は、代わりが利きません。IPAの調査でも、経営者・IT部門・業務部門の協調が「できている」と答えた割合は、日本は約4割で、米国の8割弱と差があり、協調が進んでいる企業のほうが成果が出ている傾向が示されています。

失敗しにくい5つのステップ

ここからが本題です。次の5つのステップは、経産省の手引きとIPAの調査をもとに、Nexlyが中小企業向けに並べ直したものです。経産省が示す公式の手順ではありません。

中小企業のDXの進め方を5つのステップで示した図。ステップ1は目的と範囲を決める、2は現状を棚卸しする、3は1つの業務で小さく試す、4は前後の数字を比べて定着させる、5は他の業務やデータ活用に広げる
中小企業のDXの5つのステップ(Nexlyの整理)

ステップ1:目的と範囲を決める(1〜2週間)

前の章で書いた目的の一文と、最初に取り組む範囲を決めます。範囲は1部門、できれば1つの業務の流れです。この段階で、誰が責任者かも決めます。

ステップ2:現状を棚卸しする(2週間)

対象の業務について、誰が、いつ、どれくらいの時間をかけているかを書き出します。手引きも、DXに取り組む企業は、地道な業務プロセスの洗い出しや基幹システムの棚卸から現状把握を始めている、と書いています。書き方は業務の棚卸しのやり方にテンプレートがあります。

ステップ3:1つの業務で小さく試す(1〜2か月)

優先度の高い業務を1つだけ選び、ツールで置き換えます。最初から大きく作らず、まず動くものを作り、現場の担当者に使ってもらって直します。試す前の作業時間や誤りの件数を、必ず記録しておきます。

ステップ4:前後の数字を比べて、運用に乗せる(1か月)

試した結果を、試す前と比べます。減った時間、減った誤り、現場の声を並べて、続けるか、直すか、やめるかを決めます。続ける場合は、使い方の手順書と、止まったときの連絡先を決めます。IPAの調査では、成果が「わからない」企業の理由に「成果目標を定めていない」が多いとされており、このステップを飛ばすと同じ状態になります。

前後比較シートの画面イメージ。表計算ソフト風の画面に、月の作業時間、1件あたりの時間、誤りの件数、現場の声について、試す前と試した後の数字と変化が並ぶ。ダミーの数字
前後比較シートのイメージ(ダミーデータ)

ステップ5:次の業務やデータの活用に広げる

1つ目で出た成果と課題を根拠に、次の業務に広げます。ここで初めて、部門をまたぐ業務の流れの見直しや、蓄積したデータの活用を検討します。手引きは、データを分析・活用して新たな価値を生むことを成功のポイントの4つ目に挙げており、例として、蓄積した見積もりデータを使った自動見積もりアプリや、クレームの多い商品の分析を紹介しています。

経産省の4段階プロセスとの対応

経産省の手引きは、上場企業の成功事例をもとにしたDX実現プロセスとして、4つの段階を示しています。大企業向けに作られた一般論ですが、手引きは、中堅・中小企業にとっても重要なプロセスだと述べています。5つのステップとの対応は次のとおりです。

経産省の4段階手引きでの主な内容本記事の5つのステップ
意思決定(経営ビジョン・戦略策定)トップダウンの意思決定、経営ビジョン・戦略の策定、DX推進チームの設置など体制の整備ステップ1
全体構想・意識改革(全社を巻き込んだ変革準備)アナログデータのデジタル化、推進チームと事業部門の協力による成功事例の創出ステップ2・3
本格推進(社内のデータ分析・活用)データ分析の前提となる業務プロセスの見直し、データ活用・システム構築ステップ4・5の前半
DX拡大・実現(顧客接点やサプライチェーン全体への展開)顧客に新たな価値を提供する、大胆な投資・意思決定ステップ5の先

中小企業では、4段階をすべて一度に進めようとせず、最初の2段階(意思決定と全体構想)を5つのステップの1〜3として小さく回し、その結果を見て本格推進に進む形が現実的です。手引きも、これらの取組は一度行えば終わるものではなく、中長期的な目線で継続的に変革を続けることが必要、と述べています。

各ステップの「終わりの基準」を先に決める

ステップを進めるときに、次に進んでよいかの基準があいまいだと、終わらないまま長引きます。次のように、各ステップの終わりを具体的な成果物で決めておきます。

ステップ終わりの基準(成果物)よくある止まり方
1. 目的と範囲数字入りの目的の一文。責任者と旗振り役の名前議論だけが続いて、一文にならない
2. 棚卸し対象業務のシート。優先度をつけた一覧全業務を書こうとして終わらない
3. 小さく試す現場の担当者が実際に使っている状態作り込みすぎて、現場に渡らない
4. 前後を比べる前後の数字を並べた1枚。続ける・直す・やめるの判断数字を取っておらず、比べられない
5. 広げる次の対象業務と、その目的の一文1つ目で満足して、そこで止まる

とくにステップ3の「現場の担当者が実際に使っている状態」が重要です。作った人が「できた」と言うことと、現場が毎日使っていることは別です。使われていなければ、仕組みを直すか、手順を見直すかを、ステップ4に入る前に決めます。

支援の現場から(オンライン英会話スクール)

オンライン英会話スクールで、入会手続きの進み具合を表計算のシートとkintoneの二か所で管理していたのを、kintoneに一本化しました。進み具合を7段階に決め、活動記録を1件入れるだけで日付・担当・段階が埋まるようにしています。切り替える前に、過去の846件も段階を埋め直しました。

一本化で気をつけたのは、入力を増やさないことです。新しい欄を足して入力をお願いするのではなく、もともと書いていた活動記録から埋まる形にしました。

経産省が整理した成功の7つのポイント

手引きは、DXに取り組む企業に見られる成功のポイントを7つにまとめています。5つのステップを進めるときの確認項目として使えます。

手引きのポイント実務での確認のしかた
1. 経営者がリーダーシップを取ってDXを推進する経営者が目的を決め、社内に自分の言葉で伝えているか
2. 中長期的な視点を持って取り組む5年後、10年後にどうなりたいかを、短くても言葉にしているか
3. まずは身近なところから始め、成功体験を重ねる最初の対象が、1つの業務に絞られているか
4. データを分析・活用し、新たな価値を創出する試作の結果が、数字として残っているか
5. DX推進過程の中で人材を育成する外部に任せきりでなく、社内の旗振り役が手順を理解しているか
6. 継続的に変革を続け、DXの取組を拡大する1回で終わらず、次の業務を選ぶ予定があるか。費用を投資として扱っているか
7. 支援機関等による伴走支援を活用する経営者が相談できる外部の相手(壁打ち相手)がいるか

手引きに載っている事例のひとつに、熊本県で精密機械の輸送・設置を営む株式会社ヒサノがあります。業務の属人化やブラックボックス化に課題を感じていたものの、言葉にできずにいたところ、ITコーディネータとの対話を通じて5年後の経営ビジョンを明確にし、業務プロセス全体を紙からクラウドシステムでの管理に切り替えた、と紹介されています。手引きによれば、受注がスムーズになり、複数拠点間の融通も含めて全社的に業務が最適化されたとのことです。外部の相談相手と対話してビジョンを固め、そこから逆算して業務を変えるという順序が、7つのポイントの1、2、7をまとめて示した例になっています。

体制:社内の担当と外部の使い分け

「DXの専門部署を作る」ことは、中小企業では難しい場合が多いです。IPAの調査でも、従業員100人以下で専門部署やプロジェクトチームがある企業は20.7%にとどまります。手引きは、人材を内部で雇用することが困難な場合が多い中堅・中小企業では、経営者が推進する意志を強く持ち、外部の支援機関を適切に活用して必要な人材を確保することが求められる、としています。

実際の体制は、次の4つの役割を、人数ではなく「役割」で考えると組みやすくなります。1人が複数の役割を兼ねて構いません。

役割やること誰が担うか
決める人目的を決める、優先順位を決める、予算を出す、社内に伝える経営者(代わりが利かない)
旗振り役進行管理、現場との調整、数字の記録社内の1人。IT担当でなくてもよい。業務をよく知る人が向く
現場の担当者業務の棚卸しに答える、試作を使って意見を出す対象の業務を毎日やっている人
作る人・助言する人ツールの選定、設定、自動化の組み立て、教育外部のITベンダー、支援機関、制作会社など
DX推進の体制を4つの役割で示した図。経営者が決める、社内の旗振り役が進行を管理する、現場の担当者が使って意見を出す、外部の支援者が作る・助言する。矢印で連携を示す
DX推進の4つの役割(Nexlyの整理)

外部の使い方の目安は、「社内に足りないスキルだけを借りる」ことです。手引きによれば、実際にDXに取り組む多くの企業が、ITベンダーやITコーディネータなどの外部機関の支援を活用し、必要に応じて外部の視点や、社内に足りないノウハウ・スキルを補っています。その過程で社内にノウハウを残し、中長期的に人材育成につなげることが重要とされています。丸投げしないこと、社内の旗振り役を置くことがポイントで、丸投げの失敗例はDXが失敗する原因で扱っています。人材の考え方はDX人材とはにまとめています。

公的な相談先もあります。手引きは、中小企業のデジタル化を、きっかけづくりから課題の設定、ITソリューションの提案・導入・運用まで一貫して支援するポータルサイト「デジwith」(中小企業基盤整備機構)や、DXの取組状況を自己診断できるIPAの「DX推進指標」を、関連する政策として紹介しています。診断は無料で始められるので、現状を知る入口として使えます。

予算の考え方:コストでなく投資として、小さく区切って置く

デジタルガバナンス・コード3.0は、経営者が「DXに投じる資金はコストではなく、価値創造に向けた投資である」と認識することの重要性を書いています。ただ、中小企業では、IPAの調査が示すとおり、100人以下の企業の4分の1程度が、DXの予算を確保できていません。そこで、次の3つの考え方で置くと、無理なく進められます。

1. 小さく区切って、段階ごとに判断する

全体の予算を最初に確定させず、ステップごとに使う額を決めます。ステップ3の試作で効果が確認できたら、ステップ5の予算を検討します。これなら、効果が出なかったときの損失も小さく済みます。

2. 効果は、時間を金額に換算して見る

効果の見積もりには、削減できる時間に、1時間あたりの人件費を掛ける方法が簡単です。次は、前提を仮置きした計算例です。

項目計算例(仮の数字)
対象業務の作業時間月20時間(請求書の発行)
自動化で減ると見込む割合半分(月10時間)
1時間あたりの人件費2,000円(仮定。社会保険料などを含めた自社の数字に置き換える)
年間の効果10時間×12か月×2,000円=24万円

この例では、年間24万円の効果です。仕組みの費用が初年度にこれを大きく超えるなら、別の業務を選ぶか、範囲を小さくします。時間の削減だけでなく、ミスの減少や、特定の人に頼らずに済む価値もありますが、数字にしにくいので、最初は時間だけで判断し、ほかは補足として扱うと混乱しません。

3. 補助金は、使えるものを確かめてから計画に入れる

手引きは、関連する政策として、IT導入補助金、ものづくり補助金、省力化投資補助金などを挙げています。このうちIT導入補助金は、令和7年度補正予算の事業から「デジタル化・AI導入補助金(旧:IT導入補助金)」に名称が変わっています。ただし、補助金の名称、枠、補助率、申請の期間は年度ごとに変わります。このため、補助金を前提に計画を組むのではなく、まず自社で必要な範囲を決め、そのあとで使える制度があるかを確認する順にします。現行の制度はデジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)の記事で整理しています。

最初の90日の進め方

5つのステップのうち、ステップ1〜4を90日に収める場合の目安は次のとおりです。

最初の90日の計画を示した図。1か月目は目的と範囲を決めて棚卸し、2か月目は1つの業務で試作して現場で使う、3か月目は前後の数字を比べて続けるかを決める
最初の90日の進め方(目安)

90日のあいだは、週に1回15分の確認の場を設けると、止まりにくくなります。見るのは、予定どおり進んでいるか、現場から困りごとが出ていないか、記録している数字に抜けがないかの3点です。参加者は、旗振り役と対象業務の担当者で足ります。経営者は月に1回、進み具合と次の判断(続ける・直す・やめる)を聞く場を持つと、「決める人」の役割が果たせます。

3か月で終わらない場合は、範囲を広げすぎている可能性が高いので、対象の業務を絞り直します。社内だけで進めるのが難しいときは、ステップ2と3の設計の部分だけ外部に頼むと、社内の負担が小さくなります。ツールの選び方は業務自動化ツールの選び方が参考になります。

社内への伝え方と、見落としやすい前提

現場には「仕事を減らすため」と伝える

棚卸しや試作に協力してもらう現場には、目的を最初に伝えます。「人を減らすため」「評価のため」と受け取られると、時間の記録が実態より短く書かれたり、新しい仕組みが使われなかったりします。伝える内容は、次の3点にそろえると誤解が出にくくなります。

セキュリティ対策は、ツールを入れる前に

手引きは、DX推進の前提としてサイバーセキュリティ対策が重要であり、経営者が自らのリーダーシップで推進する必要がある、と書いています。公的な制度として、IPAの「SECURITY ACTION」(情報セキュリティ対策に取り組むことを自己宣言する制度)や、「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」が紹介されています。クラウドサービスやAIを使い始める前に、アカウント管理(二段階認証など)と、入れてよい情報の範囲を決めておくと、あとで困りません。AIを使う場合の決めごとはAX(AIトランスフォーメーション)とはから、社内ルールの作り方へ進めます。

人が辞めても回るように、手順を残す

手引きの成功のポイントの3つ目に、属人化していた作業の自動化が挙げられています。仕組みを作ったあとでも、担当者が替わると使われなくなることがあります。誰が見ても分かる手順書と、止まったときの連絡先を、ステップ4で作っておくと、DXが特定の人の頭の中に残る状態を避けられます。

よくある質問

Q. DXとIT化・デジタル化は、何が違いますか?

経産省の定義では、DXは「ビジネスモデルや企業文化の変革」で、ツールを導入すること自体ではありません。紙をデータにする(デジタイゼーション)、業務を効率化する(デジタライゼーション)のは、そこに至る途中の段階です。途中の段階も価値はあるので、軽んじる必要はありませんが、目的を持たずにデジタル化だけを進めると、変革につながりにくくなります。

Q. 従業員が数人の会社でも、5つのステップは必要ですか?

必要な考え方は同じですが、規模に合わせて軽くできます。専門の旗振り役を置けない場合は、経営者が兼ねて構いません。棚卸しも、全員分の聞き取りではなく、1人あたり30分程度の確認で十分です。重要なのは、目的の一文と、試す前の数字を残すことです。

Q. 何から手をつけるのがよいですか?

時間がかかっていて、手順が決まっていて、入力が電子化されている業務が向いています。請求書の発行、問い合わせの振り分け、日報や報告書の集計などが典型です。手順が決まっていない業務や、判断が重い業務は、あとにします。

Q. 費用はどれくらいを見ておけばよいですか?

業務や規模で大きく変わるため、一律の目安は示せません。まず、削減できる時間を金額に換算して、効果の上限を知ってください。そのうえで、効果の範囲に収まるツールや外注の範囲を選ぶと、費用が先行して膨らむことを避けられます。

Q. 補助金は使ったほうがよいですか?

使えるなら、負担を減らせます。ただし、申請に手間がかかり、対象になるツールや時期が決まっています。補助金に合わせて計画を変えるのではなく、必要な取組を決めたあとで、対象になるかを確認する順が安全です。

まとめ:目的を一文にして、1つの業務で小さく試す

中小企業のDXは、大きな構想から始める必要はありません。経産省の手引きも、身近なところから始めて、成功体験を重ねることを勧めています。ただ、目的を決めないまま始めると、途中で行き先を見失います。

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この記事を書いた人

株式会社Nexly 代表 大林 諒。広告運用、kintone・SalesforceなどのCRM構築、業務の自動化とAI活用を中心に、マーケティングの設計から実行まで中小企業の支援をしています。自社でも転職エージェント「Re:WORK」を運営し、広告・SEO・CRMを日々回しています。

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