営業が5人いると、同じ会社が「丸山商事株式会社」と「丸山商事(株)」で2件登録され、商談と活動が2つの取引先に分かれていく状態がすぐに起きます。Salesforceでこれを防ぐのが重複ルールと一致ルールです。社員30名ほどの法人向けサービス会社で実際に回っている形を題材に、取引先名と電話番号で取引先の二重登録を警告するルールを作り、リードと取引先責任者は標準のルールで見張ります。読み終わると、ルールの作成、日本語のデータで効く範囲の見極め、既存の重複の洗い出しとマージまで一通りできる状態になります。作業には「アプリケーションのカスタマイズ」権限が要り、重複ルールと一致ルールは Professional・Enterprise・Unlimited などで使えます(エディションの詳細は後半の表にまとめています)。画面は Lightning Experience で説明します。
この記事の内容
重複ルールと一致ルールの関係
一致ルールが「同じ」を決め、重複ルールが「どうするか」を決める
一致ルールは、どの項目をどう比べたら同じレコードとみなすかを決めるだけで、単体では画面に何も起きません。重複ルールは、同じと判定されたレコードを営業が作ろうとしたときに、警告を出すのか、保存を止めるのか、記録だけ残すのかを決めます。
| 観点 | 一致ルール | 重複ルール |
|---|---|---|
| 決めること | どの項目をどう比べたら「同じ」か | 同じものを作ろうとしたときの動き |
| 単体で効くか | 効かない。重複ルールか重複ジョブから使われる | 有効な一致ルールが無いと有効化できない |
| 編集するとき | 一度無効にしてから編集する | そのまま編集できる |
標準で最初から動いているもの
取引先・取引先責任者・リードの標準重複ルールは最初から有効です。Summer ’17 以降に作られた組織では、レコード画面に重複を知らせる「潜在的な重複」コンポーネントも設定済みで、取引先責任者とリードの標準重複ルールはリードと取引先責任者をまたいで比べます。「設定」の「重複ルール」では「Standard Account Duplicate Rule」のように英語名で並ぶことがあります。
| 標準重複ルール | 作成時 | 編集時 | 使う一致ルール |
|---|---|---|---|
| 取引先の標準重複ルール | 許可(警告を出して保存は許す) | 許可(重複のレポートを残す) | 取引先の標準一致ルール |
| 取引先責任者の標準重複ルール | 許可(警告) | 許可(レポート) | 取引先責任者の標準一致ルールとリードの標準一致ルール |
| リードの標準重複ルール | 許可(警告) | 許可(レポート) | リードの標準一致ルールと取引先責任者の標準一致ルール |
標準一致ルールそのものは編集できません。変えたいときは、カスタムの一致ルールを作って重複ルールに付け替えます。
取引先の標準一致ルールが見ているもの
取引先の標準一致ルールは、次のどれかの組み合わせがそろったときに同じ取引先とみなします。
(取引先名 AND 町名・番地(請求先))
OR (取引先名 AND 市区郡 AND 都道府県)
OR (取引先名 AND 郵便番号)
OR (取引先名 AND 電話)
OR (Web サイト AND 電話)
OR (Web サイト AND 町名・番地(請求先))
取引先名はあいまい一致(しきい値70)、電話と郵便番号は区切りごとの加重平均(しきい値80)で比べます。電話と住所の比べ方は北米のデータ向けに作られています。
この式には「取引先名 AND 電話」が入っていますが、公式ヘルプには、正確に一致させるには新しいレコードの取引先名と、市区郡か郵便番号に値が入っている必要があると書かれています。撮影用の組織で試すと、取引先名と電話番号がまったく同じでも、市区郡を空のまま作ると標準ルールは何も検出せず、市区郡に同じ値を入れると検出しました。住所を入れない運用では標準ルールはほとんど働かず、これが自分で一致ルールを作る一番の理由です。
取引先責任者とリードの標準一致ルールが見ているもの
取引先責任者とリードの標準一致ルールは、「名 AND 姓 AND メール」「名 AND 姓 AND 電話」「名 AND 姓 AND 役職 AND 会社」など7通りの組み合わせで判定し、そのすべてに「名 AND 姓」が入っています。氏名が一致しない限り、メールアドレスが同じでも重複とはみなされません。名と姓はあいまい一致(しきい値85と90)ですが、英語の名前を前提にした比べ方で、「大輔」と「大介」のような漢字の違いは別人として扱われました。メールアドレスの大文字と小文字の違いは同じとみなされます。
先に決めること
ここを決めずに有効化すると、営業から「保存できない」「警告がうるさい」と言われて止めることになります。
何をもって「同じ会社」とするか
取引先名だけで判定すると、同名の別会社や、支店を別の取引先で持つ運用とぶつかります。取引先名と電話番号にすると、同じ会社を別の営業が登録した場合は引っかかり、代表番号が違う支店は通ります。営業6名ほどの組織なら、まずこの組み合わせで始めます。
| 判定の組み合わせ | 向いている会社 | 気をつけること |
|---|---|---|
| 取引先名だけ | 支店を取引先で分けない | 同名の別会社まで警告が出る |
| 取引先名と電話 | 代表番号を必ず入れる | 電話が空の取引先は判定されない |
| 法人番号(カスタム項目) | 法人番号を必ず調べて入れる | 入力の手間が増える。応用で説明 |
警告で止めるか、保存をブロックするか
作成時のアクションは「許可」と「ブロック」の2つです。許可は警告を出したうえで保存を許し、ブロックは重複を見せたうえで保存させません。最初は許可(警告とレポート)で始めます。ブロックにすると正当な支店登録まで止まり、移行や連携のたびに管理者が呼ばれます。1〜2か月レポートを見て、引っかかったものがほぼ本物の重複だと分かってから切り替えます。
作成時だけか、編集時もか
編集時にも警告を出すと、取引先名や電話番号を直したときに既存の取引先とぶつかったことが分かります。ただし重複ルールが編集時に動くのは、編集した項目が一致ルールに含まれているときだけです。住所だけを直しても、このルールは動きません。
見えないレコードとの重複も知らせるか
重複ルールの「レコードレベルセキュリティ」は「共有ルールを適用」と「共有ルールをスキップ」から選びます。適用は営業が参照できるレコードとの重複だけを知らせ、スキップは所有者に関係なくすべての取引先と比べて警告します(見られないレコードの中身は表示されません)。取引先の共有設定を「非公開」にしている組織では、スキップにしないと他の営業の取引先との重複に気づけません。
設計表
一致ルール「取引先名と電話番号」の設定値です。
| 画面の項目 | 設定 |
|---|---|
| オブジェクト | 取引先 |
| ルール名 | 取引先名と電話番号 |
| 一意の名前 | Account_Name_Phone |
| 説明 | 取引先名があいまい一致、かつ電話番号が一致するものを同じ取引先とみなす |
| 一致条件1 | 項目「取引先名」、一致メソッド「あいまい: 会社名」、空白項目をマッチングはオフ |
| 一致条件2 | 項目「電話」、一致メソッド「あいまい: 電話」、空白項目をマッチングはオフ |
| 条件ロジック | 1 AND 2(既定のまま) |
電話も「あいまい: 電話」にしているのは、公式ヘルプに、1つの一致ルールの中にあいまい一致と完全一致を混ぜると重複が検出されないと書かれているからです。「あいまい: 電話」は記号を取り除いてから比べるので、ハイフンの有無も吸収されます。
重複ルール「取引先名と電話番号で警告」の設定値です。
| 画面の項目 | 設定 |
|---|---|
| オブジェクト | 取引先 |
| ルール名 | 取引先名と電話番号で警告 |
| 説明 | 取引先名と電話番号が同じ取引先を作ろうとしたら警告し、レポートに残す |
| レコードレベルセキュリティ | 共有ルールを適用(取引先を非公開にしているならスキップ) |
| 作成時のアクション | 許可。「アラート」と「レポート」にチェック |
| 編集時のアクション | 許可。「アラート」と「レポート」にチェック |
| アラートテキスト | 同じ取引先がすでに登録されている可能性があります。既存の取引先を確認してください。 |
| 取引先の比較対象 | 取引先 |
| 一致ルール | 取引先名と電話番号 |
| 条件 | なし |
| 並び順 | 取引先の標準重複ルールの次 |
リードと取引先責任者は、標準重複ルールをそのまま使います。
作る手順
1. 一致ルールを作る
- 画面右上の歯車アイコンから「設定」を開きます。
- 「クイック検索」ボックスに「一致ルール」と入力し、「一致ルール」を開きます。
- 「新規ルール」をクリックします。
- 「オブジェクト」で「取引先」を選び、「次へ」をクリックします。
- 「ルール名」に「取引先名と電話番号」と入力します。
- 「一意の名前」を「Account_Name_Phone」に書き換えます。
- 「説明」に判定の内容を書きます。
- 一致条件の1行目で、「項目」に「取引先名」、「一致メソッド」に「あいまい: 会社名」を選びます。
- 2行目で、「項目」に「電話」、「一致メソッド」に「あいまい: 電話」を選びます。
- どちらの行も「空白項目をマッチング」はオフのままにします。
- 「保存」をクリックします。

「検索条件ロジックを追加…」で 1 OR 2 のようにも変えられますが、同じあいまい項目を OR の前後に何度も置くと最後の組み合わせしか評価されません。その場合は一致ルールを分けて作ります。
2. 一致ルールを有効化する
- 保存した一致ルールの画面で「有効化」をクリックします。
- 状況が有効化中になるので、そのまま待ちます。
- 使える状態になると、ログインユーザーにメールが届きます。

メールが届く前に重複ルールを有効化しようとしても通りません。
3. 重複ルールを作る
- 「クイック検索」ボックスに「重複ルール」と入力し、「重複ルール」を開きます。
- 「新規ルール」をクリックし、「取引先」を選びます。
- 「ルール名」に「取引先名と電話番号で警告」と入力します。
- 「説明」に動きを書きます。
- 「レコードレベルセキュリティ」で「共有ルールを適用」を選びます。
- 「作成時のアクション」で「許可」を選び、「アラート」と「レポート」にチェックを入れます。
- 「編集時のアクション」で「許可」を選び、「アラート」と「レポート」にチェックを入れます。
- 「アラートテキスト」を、営業が読んで次に何をすればよいか分かる文に書き換えます。
- 「一致ルール」の「取引先の比較対象」で「取引先」を選びます。
- 一致ルールで「取引先名と電話番号」を選びます。
- 「保存」をクリックします。


一致ルールの選択欄で「Create New Matching Rule」を選ぶと一致ルールの作成に進め、有効化すると重複ルールに自動で関連付きます。アラートテキストはトランスレーションワークベンチで翻訳できません。
4. 重複ルールを有効化して並び順を確かめる
- 保存した重複ルールの画面で「有効化」をクリックします。
- 「並び替え」をクリックします。
- 「取引先の重複ルール」の画面で、「Standard Account Duplicate Rule」「取引先名と電話番号で警告」の並びを確かめます。順番を変えるときは、順序の列の矢印ボタンで動かします。この画面には「保存」ボタンは無く、動かした時点で反映されます。

重複ルールは上から順に評価され、前のルールで一致したレコードは後ろのルールでは評価されません。片方を「ブロック」にするときはブロックのルールを上に置きます。許可のルールが先に一致すると、ブロックが動かずに保存されてしまいます。
5. 「潜在的な重複」コンポーネントを確かめる
登録済みのレコードを開いたときに重複を知らせるのは「潜在的な重複」コンポーネントです。取引先のレコードページには最初から置かれています。消してしまった場合は次の手順で戻します。
- 取引先のレコードを開き、歯車アイコンから「ページを編集」を開きます。
- Lightning アプリケーションビルダーの左のコンポーネント一覧から「潜在的な重複」を探します。
- ページの上のほうへドラッグします。
- 右のプロパティの「表示オプション」で、「両方を表示」「トーストを表示」「カードを表示」から選びます。
- 「保存」をクリックします。

Lightning Experience では最大15件の重複が表示されます。「潜在的な重複」はカスタムオブジェクトのページには置けません。
6. 動作を確かめる
取引先「丸山商事株式会社」(電話 06-4975-1386)が登録されている状態で、新しい取引先を作ったときの結果です。撮影用の組織で試しました。
| 入れた取引先名 | 入れた電話番号 | 結果 |
|---|---|---|
| 丸山商事株式会社 | 06-4975-1386 | 警告が出る |
| 丸山商事株式会社 | 0649751386 | 警告が出る(ハイフンの有無は吸収) |
| 丸山商事株式会社 | 06-4975-9999 | 警告が出る(下4桁だけ違う番号も一致) |
| 丸山商事株式会社 | 06-1111-2222 | 出ない |
| 丸山商事株式会社 | 空 | 出ない |
| 丸山商事株式会社 | 06-4975-1386(全角) | 出ない |
| 丸山商事(株) | 06-4975-1386 | 出ない |
| 株式会社丸山商事 | 06-4975-1386 | 出ない |
| 丸山商事 | 06-4975-1386 | 出ない |
| 丸山商時株式会社(1文字違い) | 06-4975-1386 | 出ない |

下4桁だけ違う番号で一致するのは、電話の比べ方で下4桁の配点が1割しかないからです。下4桁だけ違う支店は同じ会社として警告されます。一方、取引先名は1文字違うだけで一致しません。公式ヘルプには、あいまい一致メソッドはラテン文字だけに対応すると書かれています。日本語の取引先名では、あいまい一致は事実上「完全に同じ名前」の判定として働くと考えて運用を組みます。警告が出たら、営業は「重複を表示」で既存の取引先を開いてそちらを使います。
リードと取引先責任者をまたいだ重複チェック
Summer ’17 以降の組織では、リードと取引先責任者の標準重複ルールが、同じオブジェクトどうしとリード対取引先責任者の両方を比べます。展示会の名刺をリードで入れたら既存の取引先責任者だった、という重複がこれで分かります。それより前の組織では、「設定」で新しい重複ルールを有効にします。
項目名の違いは重複ルールの「項目の対応付け」で埋めています。標準ルールでは、リードの「会社」が取引先責任者の「取引先名」に、「町名・番地」が「町名・番地(郵送先)」に対応付け済みです。カスタムでまたぐルールを作るときはこれを自分で選びます。
| 作ったもの | 既存のもの | 標準ルールの結果 |
|---|---|---|
| リード(氏名とメールが同じ) | 取引先責任者 | 検出される |
| リード(氏名と電話が同じ、メールは違う) | 取引先責任者 | 検出される |
| リード(メールだけ同じ、氏名は違う) | 取引先責任者 | 検出されない |
| リード(名の漢字が1字違う、メールは同じ) | リード | 検出されない |
| 取引先責任者(氏名とメールが同じ) | リード | 検出される |
リードの取引開始のときは、またぐ重複ルールは動きません。取引開始の画面には標準項目の一致ルールで既存の取引先と取引先責任者の候補が出るので、そこで既存を選ぶ習慣をつけます。
すでにある重複を見つけて、マージする
重複レコードセットとは
重複ルールの「レポート」にチェックを入れておくと、警告を無視して保存された重複が「重複レコードセット」にまとめられます。セットの中に、保存したレコードと一致した既存のレコードが「重複レコード項目」として並びます。
組織全体を一度に走査する「重複ジョブ」は Performance Edition と Unlimited Edition でしか使えません。Professional と Enterprise では重複ジョブが無いので、有効化より前からある重複は自動では拾われません。
重複レコードセットのレポートを作る
- 「設定」の「クイック検索」ボックスに「レポートタイプ」と入力し、「レポートタイプ」を開きます。
- 右上の「新規カスタムレポートタイプ」をクリックします。最初は紹介の画面が出るので「次へ」で進みます。
- 「主オブジェクト」で「重複レコードセット」を選びます。
- 表示ラベルを「重複レコードセットと項目」とし、「カテゴリに格納」を選びます。
- 「状況」を「リリース済み」にして「次へ」をクリックします。
- 関連オブジェクトとして「重複レコード項目」を追加し、「保存」をクリックします。
- 営業マネージャーの権限セットで、「重複レコードセット」と「重複レコード項目」のオブジェクト権限に「参照」を付けます。
- このレポートタイプで新しいレポートを作り、重複ルールでグループ化します。

営業会議で月に1回このレポートを見ると、警告を無視して作る人がいるのか、ルールが的外れなのかが分かります。
取引先をマージする
- 重複の警告が出ている取引先を開きます。
- 「潜在的な重複」の「重複を表示」をクリックします。
- マージする取引先を3件まで選び、「次へ」をクリックします。
- 残す取引先を1件選び、「プリンシパルとして使用」にします。
- 項目ごとに、どちらの値を残すかを選び、「次へ」をクリックします。
- 「マージを確認」の画面で内容を確かめて「完了」をクリックします。

取引先のマージには、取引先の「削除」権限に加えて、システム管理者か、取引先の所有者か、ロール階層で所有者より上のユーザーであることが要ります。マージで起きることは次のとおりです。
- 商談・活動・取引先責任者などの関連レコードは、残した取引先に付け替わります。
- プリンシパル以外の取引先はごみ箱に移ります。
- Chatter フィードはプリンシパルのものだけが残ります。ファイルはすべて残ります。
- 「作成者」と「作成日」は、どれをプリンシパルにしても一番古いレコードのものが残ります。
取引先責任者とリードをマージする
手順は取引先と同じで、レコードを開いて「重複を表示」から3件まで選び、プリンシパルと残す値を選んでマージします。取引先責任者のマージには取引先責任者の「削除」権限、リードのマージにはリードの「削除」権限が要ります。Lightning Experience では、所属する取引先が違う取引先責任者どうしもマージできます。
重複ルールが拾っていないものをマージする
「丸山商事(株)」のようにルールが拾わない重複は、重複レコードセットを手で作ってマージします。
- アプリケーションランチャーから「重複レコードセット」を開きます。
- リストビューで「新規」をクリックします。
- 「重複ルール」に「取引先名と電話番号で警告」を指定して保存します。
- 「関連」タブの重複レコード項目で「新規」をクリックし、マージしたい取引先を1件ずつ追加します。
- 詳細ページ右上の▼メニューから「比較およびマージ」をクリックして、取引先のマージと同じ手順で進めます。

重複レコードセットのリストビューは「テーブルビュー」でしか表示されません。
インポート・データローダ・APIで入れたときの動き
| 入れ方 | 重複ルールの動き | 備考 |
|---|---|---|
| 画面で1件ずつ作る | 設定どおり警告・ブロック・レポート | 簡易作成で作った場合は重複ルールが動かない |
| データインポートウィザード | 警告は出ず、ルールに一致した行は保存されない | ウィザード自身の照合(名前・メール・ID)で既存レコードの更新に回せる |
| データローダ・API | 既定では警告は出ず、ルールに一致した行は保存されない | エラーとして返る。API はヘッダーで保存を許可できる |
| リードの取引開始 | クロスオブジェクトの重複ルールは動かない | 取引開始画面の候補で既存を選ぶ |
公式ヘルプには、データインポートツールやAPIでレコードを追加・編集した場合、アラートは表示されず保存もできないと書かれています。「許可」にしていてもインポートでは止まります。データローダでは、標準の重複ルールの既定のアラート文(これらのレコードのいずれかを使用しますか?)と同じ文言がエラーとして返ります。
API で止まるのは既定の動きです。開発者向けの資料では、API 52.0 以降は呼び出し側が重複ルールヘッダーで allowSave を true にすると、警告のルールなら警告を承認して保存できます。連携を自作する場合の話なので、普段の取り込みは止まる前提で考えます。
データインポートウィザードには、重複ルールとは別に、取り込む行を既存レコードに当てる照合の設定があります。取引先責任者は Salesforce ID・名前・メール・外部 ID、取引先は Salesforce ID・外部 ID・名前とサイトで照合できます。既存のレコードが見つかり、取り込む人に参照・更新の権限があれば、新規に作らず既存に値を足します。
同時に保存されたレコードどうしは比べられないので、CSV の中に同じ会社が2行あると両方とも入ります。CSV 内の重複は取り込む前に Excel で消しておきます。
実際に回っている移行の形は、重複ルールを有効にしたまま取り込み、エラーで返った行を「既存の取引先と同じかどうか」の確認リストとして使うやり方です。ルールを止めて全部入れると、Professional と Enterprise には全件を走査する重複ジョブが無いので、入った重複は自動では拾われず、レポートで目で探すことになります。
あいまい一致の限界と、表記ゆれへの対処
公式に書かれている範囲
あいまい: 会社名は、比べる前に「Corporation」「Incorporated」「Inc」「Limited」「Ltd」などの語を取り除き、「IBM」を「International Business Machines」に置き換えるといった正規化をします。挙がっているのは英語の語だけで、「株式会社」「(株)」に触れた記載はありません。上の動作確認のとおり、「株式会社」の位置、「(株)」の略記、1文字の誤字、全角の電話番号のどれも吸収されません。
入力の決まりを先に作る
ルールで吸収できない以上、入り口で表記をそろえます。営業5名ほどの組織で実際に回っている決まりは次のとおりです。
| 項目 | 決まり | 止め方 |
|---|---|---|
| 取引先名 | 登記上の正式名称。「株式会社」は略さず、前株・後株も登記どおり | 入力規則で「(株)」「(株)」を含む名前を保存させない |
| 電話 | 代表番号を半角数字とハイフンで入れる | 入力規則で全角数字を含む値を保存させない |
| 新規作成の前 | 画面上部の検索で社名の一部を検索してから作る | 研修で決める |
取引先名の入力規則のエラー条件は、たとえば次のように書きます。CONTAINS() は1つ目の文字列に2つ目の文字列が含まれていれば TRUE を返す関数です。
OR(
CONTAINS(Name, "(株)"),
CONTAINS(Name, "(株)"),
CONTAINS(Name, "㈱")
)
入力規則の作り方は「Salesforceの入力規則とアクセス権。入力漏れと見せたくないデータを防ぐ」で説明しています。
法人番号で判定する
表記ゆれに左右されない判定がほしいときは、取引先にテキスト型のカスタム項目「法人番号」(13桁)を作り、完全一致の一致ルールを作ります。完全一致はカスタム項目でも使えます。さらに確実に止めたいなら、項目の「ユニーク」にチェックを入れます。重複ルールとは別の仕組みで、同じ値を持つ2件目の保存を止めます。法人番号の無い個人事業主は空のままにし、「空白項目をマッチング」をオフにしておけば空どうしは一致しません。
応用
条件で効かせる範囲を絞る
重複ルールの「条件」に、レコードやユーザーの項目で条件を書くと、その条件に当たるときだけルールを動かせます。特定のプロファイルやロールのユーザーが作ったときだけ動かす、特定の都道府県のレコードだけに動かす、といった絞り方です。参照関係項目を条件に使った場合、その項目が空のレコードではルールが動かないので注意します。
上限
| 上限 | 値 |
|---|---|
| 1オブジェクトあたりの有効な重複ルール | 5個 |
| 1つの重複ルールに付けられる一致ルール | 3個 |
| 1オブジェクトあたりの有効な一致ルール | 5個 |
| 組織全体の有効な一致ルール | 25個 |
| 1つの一致ルールに並べられる項目 | 10個 |
| 1回の判定で重複レコードセットに入る重複 | 100件まで |
エラーログを見る
重複ルールが動くはずなのに何も起きないときは、「設定」で「重複エラーログ」を開きます。あいまい一致のエンジンが一時的に使えなかった、といったエラーが90日間残ります。
使えるエディション
| 機能 | 使えるエディション(公式の記載) |
|---|---|
| 重複ルール・一致ルール・重複レコードセット・取引先と取引先責任者のマージ | Essentials・Professional・Enterprise・Performance・Unlimited・Developer |
| リードのマージ | Starter・Essentials・Group・Professional・Enterprise・Performance・Unlimited・Pro Suite・Developer |
| 重複ジョブ | Performance・Unlimited |
重複ルールと一致ルールのヘルプの「必要なエディション」には Starter と Pro Suite の名前が載っていません。その場合は「設定」の「クイック検索」で「重複ルール」が出てくるかを先に確かめます。
できないことと、その代わり
| できないこと | 理由・公式の記載 | 代わりの手 |
|---|---|---|
| 日本語の社名の表記ゆれを吸収する | あいまい一致はラテン文字のみ対応。正規化で除く語は英語のみ | 入力規則で表記をそろえる。法人番号で完全一致にする |
| Professional・Enterprise で既存データを全件走査する | 重複ジョブは Performance・Unlimited のみ | 取引先名で並べたレポートを Excel に出して探す。AppExchange の重複管理アプリを使う |
| インポートで警告だけ出して取り込む | インポートツールと API では、既定では警告は出ず保存されない | エラー行を確認リストにして、既存に寄せるか判断してから入れ直す |
| CSV の中の重複を止める | 同時に保存されたレコードどうしは比べない | 取り込む前に Excel で重複を消す |
| リードの取引開始で、またぐ重複ルールを動かす | 取引開始ではクロスオブジェクトの重複ルールは動かない | 取引開始画面の候補で既存の取引先・取引先責任者を選ぶ |
よく詰まるところ
| 症状 | 原因 | 直し方 |
|---|---|---|
| 同じ社名・同じ電話の取引先を作っても標準ルールの警告が出ない | 取引先の標準一致ルールは、市区郡か郵便番号に値が無いと正確に一致しない | 取引先名と電話番号の一致ルールを自分で作る |
| 「(株)」と「株式会社」で警告が出ない | あいまい一致はラテン文字のみ対応で、日本語の略記は吸収しない | 入力規則で「(株)」を止め、正式名称に統一する |
| 電話が空の取引先で警告が出ない | 「空白項目をマッチング」がオフだと、片方でも空なら一致しない | 電話を必須にするか、取引先名と Web サイトのルールを足す |
| 一致ルールを編集できない | 有効な一致ルールは編集できない | 一致ルールを無効化してから編集し、編集後に有効化し直す |
| 重複ルールを有効化できない | 付けた一致ルールが有効になっていない、または有効化の処理中 | 一致ルールの有効化完了メールを待ってから有効化する |
| 一致ルールに項目を足したら何も検出されなくなった | 1つのルールにあいまい一致と完全一致を混ぜている | 一致メソッドをそろえるか、ルールを分ける |
| 自作ルールでなく標準ルールの警告文が出る | 上の重複ルールで一致すると、下のルールでは評価されない | 「並び替え」で順番を変える。ブロックのルールを上に置く |
| 管理者には警告が出るのに営業には出ない | 営業に一致ルールの項目へのアクセス権が無いと、重複ルールは期待どおり動かない | 権限セットで項目の参照権限を付ける |
| データローダで既定のアラート文と同じ文言のエラーになる | インポートと API では重複ルールに一致した行は保存されない | 既存レコードに寄せるか判断する。正しく別の会社ならルールを見直す |
| 営業がレポートで重複レコードセットを選べない | カスタムレポートタイプが無い、またはオブジェクト権限が無い | レポートタイプを作り、「重複レコードセット」「重複レコード項目」に参照権限を付ける |
| メールが同じなのに別人として登録できてしまう | 標準一致ルールはどの組み合わせにも名と姓が入っている | メールの完全一致だけのカスタム一致ルールを作り、リードに新しい重複ルールを作る |
次にやること
ルールが動き始めたら、Excel から取引先とリードを移します。データの整え方は「ExcelからSalesforceへ移す手順。データインポートウィザードとデータローダの使い分け」、エラー行の扱いと一括更新は「データローダの使い方。インストールから一括更新・削除まで」で説明しています。問い合わせフォームからリードを自動で入れる仕組みは「Salesforceのリード管理とWeb-to-リード。問い合わせフォームから自動で登録する」、取引先・取引先責任者・リードのつながりは「Salesforceのオブジェクトとは。標準オブジェクトの一覧とつながり」にまとめています。